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メディア
新聞は生き残れるのか? 新聞社経営の実態は?
どのようなものなのでしょうか?
新聞の発行部数は年々減少が続いており、ここ10年で600万部近く、率にして
1割ほど少なくなりました。このような市場環境を反映して新聞社の経営状態は
よくないといわれています。しかし、新聞社が皆、経営が苦しいというわけでは
なく、新聞社ごとの差が激しくなっているというのが現実です。
いわゆる三大紙の中でも朝日新聞は良好な経営状態ですが、毎日新聞はかなり苦しい
状況に陥っています。朝日新聞の2013年3月期の決算は、売上高が約4700億円、経常
利益は約173億円で、経常利益率は約3.6%でした。上場企業の平均的な経常利益率は
5%弱といわれていますから、まずまずの水準といってよいでしょう。一方、苦戦が
伝えられる毎日新聞は売上高約2400億円、経常利益は22億円ですから、朝日新聞の
7分の1しか利益を上げていません。産経新聞もあまり良くない状況で、売上高
約1300億円に対して、経常利益は22億円となっており、毎日ほどではありませんが、
収支はギリギリです。
これは毎年の利益の話ですが、会社の存続性を考えた場合には、資産についても
評価する必要があります。この部分を見ると朝日新聞の突出ぶりが非常に目立ちます。
同社は6000億円近い総資産を持っているのですが、このうち半分以上が純資産と
なっており、借金は実質的にゼロという超優良企業です。また2000億円近い金額を
運用に回しており、ここからの収益もあります。築地の東京本社に加え、有楽町
マリオン、大阪の中之島フェスティバルタワーなど、収益性の高い優良不動産を多数
保有しています(築地は自己使用のみ)。過去からの利益蓄積がいかに大きかったのか
が分かります。
一方、毎日新聞は、資産のうち8割が負債で占められており、借金依存体質が目立ちます。
本社ビル以外には目立った収益不動産はなく、新聞事業の不振を本社ビルの賃貸収入で
なんとかカバーしているという状況です。
日経は規模では毎日と同じくらいですが、収益率はかなり高く、経常利益の額は朝日新聞
と並びます。財務体質も良好でしたが、2008年には340億円をかけて大手町に新社屋を
建設しました。これが吉と出るか凶と出るかは今のところ分かりません。また売上高に
比して従業員数が多く、広告依存度も高いため、今後の部数低下による影響は大きいと
考えられます。読売新聞は詳細な決算を公開していないので、実態はつかみにくい状態です。
今後、紙の新聞が衰退することは確実であり、新聞社の売上や利益は減少が見込まれます。
ただ新聞社の給料はかなり高く、朝日新聞や日経新聞の社員は40歳代前半で1300万円近い
年収があります(毎日や産経は700万円から850万円程度です)。潤沢な資産を持つ朝日
新聞や日経新聞は、当面の利益減少に対しては給与の引き下げで対応し、売上げの減少に
合わせて社員数を減らしていけば、すぐに経営が傾くということはないでしょう。(※続く)
●http://news.nifty.com/cms_image/news/economy/thepage-20140324-03246/thumb-thepage-20140324-03246-economy.jpg
◎http://news.nifty.com/cs/economy/economyalldetail/thepage-20140324-03246/1.htm
一方、目立った資産がなく、給与の引き下げもすでに実施している毎日や産経は、
今後、新聞離れが加速すると、かなり経営が苦しくなるかもしれません。
また朝日新聞や読売新聞など、有力なテレビ局をグループに持つ新聞社については、
テレビ局との合併というウルトラCも理屈的には可能です。社会の移り変わりが早く、
多くの新聞社が消滅した米国とは異なり、日本の新聞社はしぶとく生き残る可能性が
高いといえるでしょう。
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